東山紀之らが担ったジャニーイズムの継承。しかし、山口達也の退場が時代の変わり目を告げた【宝泉薫】「令和の怪談」(11)
「令和の怪談」ジャニーズと中居正広たちに行われた私刑はもはや他人事ではない(11)【宝泉薫】
今思えば、その後のジャニーズ潰しを危惧していたかのような内容でもある。というのも、今回の騒動においてもまた、性的なスキャンダルを嫌悪するという時代の気分が大きく影響したからだ。多様性がどうとかこうとかいいつつ、性に関しては健全かつ良識的なかたちしか認めない、いや、許さないという気分が近年では支配的だ。
そしておそらく、この流れはもう簡単には変わらない。いくら私刑ごっこがブーム化している世の中とはいえ、事件化もされないまま、故人を極悪人に仕立てて、その後継者やタレント、さらにはファンまで叩くということがここまでエスカレートしたのは、それが誰も止められない激流となってきたからだろう。
種の存続にとって根幹ともいえる「性」についてそこまで禁欲的になりすぎるのはどうかとも思うが、何がよしとされるかは多数決でしかない。言葉の問題などもそうだ。たとえば「煮詰まる」という言葉を「行き詰まる」という意味で使う人が増えれば、それが普通になってしまう。誤解が正解を上回れば、それが新たな正解になったりもするのである。
ジャニーズ騒動はまさに、世間の多数決によるものだった。その決め手は性的にいかがわしいスキャンダルへの拒否感だ。ひと足先に消えた山口は、世間の空気が変化しつつあることを身をもって予告したともいえる。
ただ、性への衝動を全否定してしまうと、人間も芸能も成立しなくなる。性は本来なんでもありで、それを暴走させないために法やモラルが存在するのだ。芸能はそのギリギリを攻めるために人間が発明したものでもある。
ジャニーズという芸能もまたしかり。世間的にはいろいろいかがわしいイメージもまといつつ、真逆の健全さもちゃんとアピールしたりして、そのあたりのバランスが絶妙だった。大ざっぱにいえば、爽やかさと色っぽさの混在、そこが日本女性を長年惹きつけてきたのだ。
そんなジャニーイズムの体現者かつ継承者のようだったのに、じつはそうでもなかったのではと思わせる人もいる。次回はその男についての話から始めるつもりだ。
文:宝泉薫(作家、芸能評論家)
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